研究実績の概要 顎関節症に対する関節鏡視法の真の適応を明らかにする目的で、以下の基礎的、臨床的研究を行い、本法の効果ならびに為害性について検討した。 (1)基礎的研究;ヒツジの顎関節を用いた診断的関節鏡視の為害性に関する検討では、本操作がもたらす関節内損傷は術後2か月目においても滑膜増生と滑膜下骨のリモデリングを呈したが、重篤な退行性病変はみられず、本法の安全性と一方で慎重な手技の必要性が示唆された。なお、損傷された滑膜は術後2週目頃に良好に再生されたが、剥離した関節軟骨については、線維性組織の増殖による再生機転はみられたものの、術後2か月目において不完全であった。 (2)臨床的研究;顎関節症患者に施行した診断的関節鏡視における各所見(滑膜炎、線維性癒着、退行病変)を、評点方式を用いて関節内の3病態の程度と広がりを臨床症状と比較検討したところ、癒着の程度と最大開口度、滑膜炎の程度と関節疼痛の程度がいずれも負の相関を示したことから、関節腔内の病態と臨床症状が関連があることが証明され、この点から診断的関節鏡視法の意義が確認された。また本法による合併症は認めなかった。なお、4例の習慣性顎関節脱臼に鏡視下結節形成術を試みて、合併症なく全例で良好な結果が得られたことから、より非侵襲的である鏡視法が本疾患においても適応拡大される可能性が示された。
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