研究概要 |
単純ヘルペスウイルス1型(HSV-1)の重複潜伏感染の存在を明らかにするために、複数株の同時再活性化あるいは複数株による同時感染の存在の有無を検討した.すなわち,口腔領域HSV-1感染症分離株と口腔悪性腫瘍手術患者唾液中より無症候性に排出のみられた分離株からのウイルスクローン分離株につき制限酵素BamH IとSal Iを用いてDNAパターンを解析し比較した. 対象は,HSV-1感染症群10例(疱疹性歯肉口内炎7例,口唇ヘルペス3例)と無症候性排出群12例で,ウイルスクローンの分離はプラック法にて行い,感染症群でクローン数は総数45個(4個7例,5個1例,6個2例),平均4.5個であった.また,無症候性排出群では,クローン数は総数73個(4個1例,5個3例,6個5例,8個3例)平均6個であった. その結果,HSV-1感染症群では,全症例毎の各クローン間の株鑑別が出来ず,10症例全てが同一株であった.しかし,無症候性排出群では,12例中1例に異る株が見られた.すなわち,C_2C_5ではM断片が存在するが,C_1C_3C_4の三つのクローンではM断片が存在せず異る株であった. このことは,12例中1例(8.3%)と頻度は低いものの,唾液中への複数株の同時排出の可能性を示唆するとともに重複潜伏感染の存在を明らかにしたものと考えている.
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