研究概要 |
今年度は、習癖除去装置装着直後の舌運動の変化を解析し、その効果について定量的に検討した。被験者は、東京医科歯科大学歯学部附属病院小児歯科外来を受診した患者のうち、嚥下時舌突出癖を有し、tongue crib付可撤式舌習癖除去装置にて治療を行った男児5名女児5名計10名である。 エコーウインドウは上顎左右第一大臼歯最近心点を通り咬合平面に垂直な前額断面とし、習癖除去装置装着前後で、口蓋縫合部(C点)、左右歯頸部(LおよびR点)、C点とL点,R点との中点(L′およびR′点)の計5点において、2mlの水道水を5回ずつ繰り返し嚥下させ、M+Bモードによる描出を行い記録した。Mモードによって描出された運動経路のうち、舌の嚥下運動開始から口蓋接触までの間を、反動部分、上昇部分、プラトー部分、下降部分の4ステージに区分し、移動量、移動時間とこれらの積分、速度等20項目を解析した。また、それぞれの計測値を前年度報告した正常児の値と比較した。さらに、Bモードによって描出された舌運動を再構築して嚥下時の舌背の動きを、時系列を用いて3次元表示した。 可撤式習癖除去装置装着前後の比較では、C点及びL',R'点では両者にほとんど差が見られなかったが、L,R点において上昇部分を中心に、習癖除去装置を装着した状態で舌運動量が少なかった。習癖除去装置を装着した状態と正常群との比較では、C点L',R'点に装置装着前と同様な違いが認められるものの、L,R点において差はほとんど認められなかった。 以上から、舌突出癖を有する患児に可撤式習癖除去装置装着することにより、辺縁部の舌運動は正常児のそれに近いものとなるものの、舌中央部に形成される陥凹は、依然として正常群と比べ広範囲に及んでいるものと考えられた。
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