研究概要 |
歯髄細胞の象牙芽細胞への分化に影響する細胞外基質タンパク質(ECMP)をスクリーニングし,歯髄細胞の象牙芽細胞様細胞に分化する過程においてECMPのおよぼす作用を解明するために,我々はイヌ歯髄細胞の無血清培養系の検討を行った.すなわち,軟骨細胞の無血清培養を参考に,αMEM培地に成長因子(bFGF,EGF),リポタンパク質,トランスフェリンを添加したものを基本培地とし,イヌ歯髄細胞が無血清でも増殖を行う系を確立し,各種ホルモン,ビタミン,成長因子の添加により,細胞が増殖し,なおかつ,アルカリホスファターゼ活性上昇能やタンパク合成能に富んだ歯髄培養系を確立させることが目的であった.イヌ犬歯歯髄細胞に,各種細胞増殖因子およびホルモンを添加したαMEM培地(血清非添加)をI型コラーゲンでコーティングしたウェルに加え,この培地内で歯髄細胞を培養し,3日,7日,10日後にDNA量とアルカリホスファターゼ(ALPase)活性を測定したところ,20%ウシ胎仔血清含有αMEM培地内で歯髄細胞が示すのと同じDNA量とALPase活性を与える培養条件を得ることができた.また,計画当初に予想されていた様に,ウェルコーティングを行わない場合には歯髄細胞の培養はどのような条件下であっても不可能なことがわかった.平成9年度は8年度の実験において確立された無血清培地に各種ECMPをディシュコーティングあるいは直接添加して歯髄細胞の活性に与える影響を検討し,歯髄細胞の象牙芽細胞への分化メカニズムに重要な役割を果たすECMPのスクリーニングを行う予定である.そこで,明らかに影響を与えるECMPが選択できれば,それらのタンパクの濃度変化による歯髄細胞の動態の変化について調べる.現在,細胞性フィブロネクチン,血漿性フィブロネクチン,ラミニン,コラーゲンタイプIII,コラーゲンタイプIVなどをその候補として選択している.
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