本年度は、歯周病の免疫学的予防法の開発を目指し、歯周病細菌の一つであるActinobacillus actinomycetemcomitans(Aa)の菌体表層抗原に特異的なポリクローナル抗体とモノクロナール抗体を作製したのち、これらの抗体を用いて以下のような研究成果を得た。 1)Aa Y4株のb血清型特異多糖抗原、リポ多糖、64kDa熱ショックタンパク質に特異的なモノクロナール抗体と同株の全菌体及び64kDa熱ショックタンパク質に特異的なウサギポリクローナル抗体を得た。 2)Aa Y4株のb血清型特異多糖抗原の合成に関与している遺伝子群をクローニングした。同遺伝子群を用いて形質転換を行ったEscherichia coliは、Aa Y4株の血清型特異多糖抗原と同じ免疫学的特異性を持つ多糖体を菌体表層に産生した。すなわち、ゲル内沈降反応において、b血清型特異多糖抗原に特異的なモノクローナル抗体はAa Y4株とE.coli形質転換株のオートクレーブ抽出抗原と互いに融合する沈降線を形成した。また、b血清型特異多糖抗原に特異的なモノクローナル抗体はAa Y4株とE.coli形質転換株の菌体凝集を誘導したが、64kDa熱ショックタンパク質に特異的なモノクローナル抗体やポリクローナル抗体では凝集を起こせなかった。 3)E.coli内で同多糖抗原を発現させるためには、クローニングしたDNA断片の中央部に位置する約13 kbの領域が不可欠であり、この領域にある遺伝子の多くはすでに報告のある他の菌種の菌体表層多糖の合成や輸送に関連のある遺伝子と高い相同性を示した。
|