研究概要 |
本年度は、歯周病細菌の菌体表層抗原に特異的なポリクローナル杭体とモノクローナル抗体を用いて以下のような研究結果を得た。 1) 昨年度クローニングしたA.actinomycetemcomitans Y4株の血清型b特異多糖抗原合成遺伝子群を用いてプローブを作製し、コロニーハイブリダイゼーション法により血清型aのATCC29523株と血清型cのNCTC9710株由来のクローンライブラリーから陽性コロニーを検出した。その結果、Y4株血清型特異多糖抗原を合成する遺伝子群と高い相同性を持つ領域をコスミドを用いて単離することができた。血清型bおよびcから得られた遺伝子群は相同性が高いながらも全く異なる領域を含んでおり、それぞれの多糖の構造を特徴づける部分であると推定された。血清型aにおいては対応する領域内に多糖合成遺伝子群は見い出されず,全く異なる領域に多糖合成遺伝子群を有することが明らかになった。 2) A.actinomycetemcomitans Y4株と血清型多糖抗原欠失株(ST2株及びST5株)の全菌体のヒト多形核白血球による補体依存性の貪食に伴って生じるケミルミネセンス反応を調べた。その結果、Y4株菌体に比べて多糖抗原欠失株菌体において有為に強いケミルミネセンス反応が生じた。BIAcoreを用いて解析したところ、ヒト多形核白血球によるA.actinomycetemcomitans菌体の貪食における補体依存性は、補体成分C3bとリボ多糖との相互作用によって起こることや血清型多糖抗原はこの相互作用を立体的に阻害していることが明らかになった。さらに、Y4株菌体の多形核白血球による貪食は、血清型b特異多糖抗原に特異的なモノクローナル抗体で強く促進されることが明らかになった。
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