研究概要 |
当初,(1)歯根蛋白に対する抗体の作製と(2)歯肉溝滲出液の採取及び調製,並びに(3)ペリオテストによる歯の動揺度の測定を予定していた. (3)の動揺度測定に関しては順調にデータ採取が進んでいる.現在までのところ,中程度以上の歯根吸収をおこした患者6名(被験群)を採取し,健常人(健常群,術中にほとんど歯根吸収をおこさなかったもの)10名の上下8前歯の採取を(Tooth Mobility Checker,ヨシダ)を用いて行った.この結果,被験群の動揺度は3.2(平均)【.+-。】0.6(標準偏差)であったのに対し,健常群は2.6【.+-。】0.9であった.Scheffe's F testを行ったところ,危険率5%で有為差が認められた.動揺度と歯根吸収とは有為な相関がみられるようである.(2)の歯肉溝滲出液の採取については難航している.文献的には歯周病患者において30秒で採取可能とのことであるが,矯正治療中でも歯肉が健常な被験者は採取により多くの時間が必要である.現在,歯肉溝浸出液の採取は矯正治療中でかつ歯肉が健常であるものに限定しているので,採取に必要な時間を設定している.(1)の抗歯根抗体の作製については,便宜抜去された歯牙の歯根をパウダー状にし,5M塩酸グアニジン,10%EDTAで4℃,48時間で抽出したところで留まっている.それは上述の歯肉溝浸出液の採取が難航しているため,抗体作製担当者もこの歯肉溝浸出液の採取に動員されているためである.しかしながら,抗体の作製は最短1ヵ月程度でできるもと思われるのでこの遅れはさしたる問題ではないと考えている.
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