研究概要 |
口腔常在菌の一つであるStreptococcus milleriは,細菌性心内膜炎や糸球体腎炎、あるいは全身の化膿病変の重要な原因菌の一つであることが知られている。申請者らはこれまでにヒトの口腔内および全身各部の化膿巣から分離したS.millrriのかなりの菌株がその菌体表層に口腔および全身の組織細胞表面へ付着する因子を併せ持つことを示唆してきた。 そうしたS.millrriの生体定着因子を分離、同定し、それらの生化学的、免疫学的性状を明らかにするため、昨年度までに、代表的は唾液凝集株であるS.intermedius 1208-1株(g)から唾液による菌体の凝集に関わる菌体表層物質を抽出し、液体クロマトグラフィーによって単離し、それが分子量200kd以上の糖タンパクであることを示した。 本年度は、得られた唾液凝集因子は、いくつかのsubcomponents(Mw:ca.100kd)よりなる巨大な(Mw:>669kd)タンパク性の物質であり、glycine,serine,glutamic acid,aspartic acidを主な構成アミノ酸として、非極性アミノ酸を25%の割合で含み、papainとpronase-Pに感受性であるが、lysozymeやneuraminidaseなど4種のglycosidasesには非感受性であることが明らかになった。次いで、得られた精製唾液凝集因子に対する家兎免疫特異血清を用いて、immuno-gold法により唾液凝集因子の局在を電子顕微鏡下に調べ、1208-1株の菌体表層のfimbriaeを用いて、immuno-gold法により唾液凝集因子の局在を電子顕微鏡下に調べ、1208-1株の菌体表層のfimbriae部分に存在することを示した。また、この特異免疫血清との反応性から,この唾液凝集因子は血清型g,h,g-のS.intermediusにほぼ限局して存在していることが知られた。このことから、血清型iおよびjのS.intermedius株にもみられるヒト赤血球凝集能(Yamaguchi et al.,1993)には関与していないと思われた。
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