研究概要 |
口腔常在性"Streptococcus milleri"は、細菌性心内膜炎や糸球体腎炎あるいは全身の化膿病変の重要な原因菌の一つである。我々はこれまでにヒトの口腔内あるいは身体各部の化膿巣から分離した"S.millrri"のかなりの菌株が様々な組織細胞へ付着する菌体表層因子を併せ持つことを示唆した。本研究では、その生体定着因子の1、2の異同を明らかにすべく、これを分離、同定し、その生化学的、免疫学的性状を調べた。 先ず、血清型の異なる36 S.millrri 菌株について、歯面定着能を知る一指標となる唾液による菌体凝集能を調べ、血清型g(g-,g,j-)およびhのS.intermedius、S.constellatus、S.anginosus株は唾液凝集能を示すが、その他の10血清型の菌株にはないことが知られた。代表的な唾液凝集株であるS.intermedius 1208-1株(g)は菌体表層に長い線毛様構造物を持つが、非凝集性の代表としたS.constellatus NCTC 10708株(b)には存在しないことが電顕下に観察された。次いで、唾液凝集性S.intermedius 1208-1株(g)から抽出した菌体表層物質を、硫安塩析とDEAE-Sephalose CL-6B カラムクロマトグラフィーによって単離した。SDS-PAGEと化学分析の結果、得られた唾液凝集因子は分子量60〜100kdの構成単位からなる巨大(>250〜669kd)な糖蛋白性の物質であり、glycine,serine,glutamic acid,aspartic acidを主要アミノ酸として、非極性アミノ酸を25%の割合で含み、papainとpronase-Pに感受性であるがlysozymeやneuraminidaseなどのglycosidasesには非感受性であった。さらに、精製唾液凝集因子に対する家兎免疫特異血清を用いたimmuno-gold法により唾液凝集因子の局在を調べ、1208-1株(g)の菌体表層の線毛部分に存在することを示した。また、特異免疫血清との反応性から、唾液凝集因子は血清型gおよびhのS.milleri株にほぼ偏在していることが確認された。したがって、血清型gおよびhに加えiおよびjのS.intermedius株にもみられる羊赤血球凝集能(既報)には関与していないと思われた。
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