現在の矯正治療は、重度の骨格的な不正咬合に対しては、外科的矯正治療が実施されているが、手術による形態的改善は確立されつつあると思われる。しかし、手術後の筋肉の機能的回復については、回復されているのか、また、どの時期に、どのような回復程度であるのか不明である。外科的矯正治療の術後評価は主に筋電図に関した報告がされているが、本研究では、ラット咀嚼筋を対象として外科的矯正治療時に実施する筋肉剥離について、剥離後の筋萎縮から回復状態について組織学的に検討した。今回生後120日齢Wistar系CrJラット咬筋剥離実験を行い、術後5週齢から8週齢の期間の筋肉変化をH・E染色およびAzan染色を用いて評価した。 結果1.5週齢から8週齢の各期間共にope側はControl側と比較して筋線維の萎縮は認められた。 2.術後5週齢から8週齢の各期間の咬筋線維の直系を計測した結果ope側はControl側と比較して1%の危険率をもって有意差が認められた。 以上の結果より、咬筋剥離後は、筋肉の回復は長期間認められない。このことは、臨床で実施している外科的矯正治療に伴う咬筋剥離は、術後1年および2年程度では、筋肉の回復は認められず、回復期間は比較的長期を要する。実際の臨床では、術後に筋肉の機能回復を目的とした筋肉のトレーニングを実施することが必要と考える。
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