本研究では抗腫瘍活性を示す新しいタイプの人工機能性分子、先導化合物の探索を志向して、次のような総合的研究を行った。 I. 含窒素生物活性天然物の合成とデザイン 抗腫瘍活性天然物はしばしば微量成分であり複雑な構造を有するものが多い.その活性評価に必要な量的確保のため、立体および位置選択的且つ短工程で次に示される抗腫瘍活性天然物および非天然型立体異性体の化学合成を行った。 1. 海洋産抗腫瘍性化合物マンザミン類の合成研究。 2. エンジイン抗腫瘍性抗生物質ダイネミシンAの合成研究 II. スフィンゴシンおよびその類縁体の合成研究 1. スフィンゴシン類のプライマーゼ阻害活性に関する構造活性相関 セカンドメッセンジャーとしての機能が浮上してきたスフィンゴシンはシグナル伝達系の障害のほかに、プライマーゼを阻害することが見出されDNA複製機構の障害に関与していることが推定されている。そこでスフィンゴシンの立体選択的な簡易合成法による、異性体、更に類縁体の合成を行い、プライマーゼ活性におよぼす構造と活性の相関を検討すると共にプライマーゼとスフィンゴシンの認識部位についての考察を行った。 2. 新規抗マラリア剤の開発を目的とするスフィンゴ脂質の合成 III. DNA修復酵素Vsrの合成、およびそのDNA認識機構、解裂機構の解析 Vsrタンパクは、5-メチルシトシンの加水分解により生じるG-Tミスマッチを選択的に認識し、backboneの切断を行う分子量18kdaのDNA修復タンパクである。しかし、その3次元構造、ならびに分子レベルでの配列認識およびDNA鎖切断の機構は未知である。本研究においては、タンパクの3次元構造、ならびに分子レベルでの配列認識およびDNA鎖切断の機構の解明を目指し、Vsrタンパクの過剰発現ならびに、結晶化に成功した。さらに基質となるオリゴヌクレトチドのタンパクの存在の有無による構造変化をNMRを用いて検討し、配列記識の機構を解明した。 IV. 光学活性アミン類の不斉合成 1. 初のエナンチオ選択的Pictet-Spengler反応に成功した。 2. イミンのジアステレオ選択的アルキル化反応で中〜高い選択性を見い出した。
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