研究概要 |
生体の機能維持に重要である細胞間、細胞内の信号伝達系に作用する天然物のスクリーニング・活性物質の単離同定、活性化合物類縁体の合成と構造活性の解明を試みている。5-S-GAD_L(5-S-glutathionyl-β-alanyl-L-dopa)は大腸菌を感染させた昆虫から分離された抗菌性ペプチドとして単離されたが、その後vSrcの自己リン酸化に対し阻害作用が認められ、また破骨細胞の骨吸収に対する阻害作用を持っている。5-S-GADの合成はdopa誘導体とSHを持つペプチドから、チロシナーゼの作用により生ずるorthoquinoneを経由して簡単に合成出来ることから、様々な構造の展開が可能である。現在までにβ-alanyl-L-dopa部分をβ-alanyl-D-dopa,β-alanyl-L-methyldopaに変換し、またβ-alanyldopamine,dopamineに変換した化合物を合成した。glutathione部分はcysteine,glycyl-cysteine,glutamyl-cysteineに変換した5-S-GADを合成しそれぞれの活性を検討した。この実験で問題になるのは、vSrc(NIH3T3cell transformatnt)とバキュロバイラスで発現させたhumancSrcでの実験結果の解釈が複雑なことで、とくにvSrcでの自己リン酸化と人工基質に対するリン酸化に対する阻害に有意の差が見られることである。シグナル伝達に関するcSrcの役割を考えると人工基質に対する影響を見た結果の方がシグナル伝達に対する作用を見ているのに近いと考えられる。現在はチロシンキナーゼ阻害作用に加えて、interleukin-2および-6産生細胞に対する阻害、促進作用、Herpes Simplex Virusに対する阻害作用を持つ化合物の検索を行っている。生薬エキス、微生物代謝産物を2,000以上スクリーニングした。HSVの細胞感染阻害作用が認めれたものは10種以上あり、現在までいずれも既知化合物であるがvalinomycineとconcanamycinが活性物質として同定された。IL-2産生抑制作用を示したのは毒性が強いホミカアルカロイド類あり、またIL-6の産生を阻害する活性は微生物の培養産物に検出され、現在分離を検討中である。
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