研究概要 |
新規超原子価ヨウ素試薬の開発と生物活性天然物の立体選択的合成への応用を目指して、平成8年度は申請者らが最近報告した超原子価ヨウ素試薬phenyliodine(III)bis(trifluoroacetate)(PIFA)を用いるフェノールエーテル類への分子間求核種導入(J.Am.Chem.Soc.,1994,116,3684.)の分子内反応への応用による各種生物活性天然物の必須部分構造の効果的な合成法の開発研究を研究実施計画に基づき行った。既に、申請者らはPIFAを用いるフェノール誘導体からのスピロジェノン形成反応を見出しているが、今年度は、活性型超原子価ヨウ素試薬PIFA-BF_3・Et_2Oによるフェノールエーテル類のフェノールカップリング反応による種々のヒガンバナアルカロイド類の基本骨格の収率の良い合成法の開発に成功した。(J.Org.Chem.,1996,61,5857 ; Chem.Commun.,1996,1481.)一方、最近、その特異な構造と強力な抗腫瘍活性から注目を集めている含硫黄discorhabdinアルカロイド類の不斉全合成を目指して、超原子価ヨウ素試薬を用いるそれら必須部分構造、即ち、酸素官能基を有する含硫黄複素環化合物類とキノンイミン類の効果的な構築法の開発研究も行い、以下の成果を得た。1.活性型超原子価ヨウ素試薬PIFA-BF_3・Et_2Oとベンジルチオアルキル側鎖を有するフェノールエーテル類との反応により含硫黄複素環化合物類を高収率で得ることに成功した。(Chem.Commun.,1996,2225.)2.活性型超原子価ヨウ素試薬PIFA-TMSOTfを用いてアルキルアジド側鎖を有するフェノールエーテル類の分子内閉環により合成化学上有用なキノンイミン類及びキノンイミンモノアセタール類の短工程かつ収率の良い直接合成法を確立した。(Chem.Commun.,1996,1491.)現在、これらの知見に基づき、各種ヒガンバナアルカロイド類と含硫黄discorhabdin類の不斉全合成研究を遂行中である。
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