本研究では、インドネシア各地で民間的なマラリア治療に用いられている熱帯薬用植物を材料として、水及びアルコール抽出エキスを調製し、各エキスについてin vitroでのマラリア原虫に対する増殖抑制活性試験を行うとともに、活性が認められた抽出エキスについて、設備備品の項で購入した高速液体クロマトグラフィーをはじめとした種々の分離技術を用いて含有成分の単離を行った。 その結果、スマトラ島ベンクル州において採集したクマツヅラ科植物Peronema canescens葉部、およびフローレス島中部において採集したミカン科植物Fagara rhetza樹皮から、ヒト赤血球中のクロロキン耐性マラリア原虫(Plasmodium falciparum)増殖阻害活性が認められた新規clerodane型ジテルペンperonemin A_2(118μMで82%阻害)、新規酸アミドHazaleamide(IC_<50>43μM)を単離した。さらに、スマトラ島ベンクル州において採集したクスノキ科植物Beilschmiedia madangの木部から単離したビスベンジルイソキノリンアルカロイドdehatrineは、クロロキン耐性マラリア原虫増殖阻害活性(IC_<50>:0.17μM;IC_<90>:3.6μM)を示した。これは、同株マラリア原虫に対してキニ-ネ(IC_<50>:0.27μM;IC_<90>:1.5μM)とほぼ同等の活性である。 また、インドネシア各地で民間的に抗マラリア薬として用いられているその他数種の薬用植物エキスに、クロロキン耐性マラリア原虫増殖阻害活性が認められた。中でも、ボルネオ島西カリマンタン州において採集したニガキ科植物Eurycoma longifolia根の水エキスには、クロロキン耐性マラリア原虫に選択的な強い増殖阻害活性を有していることが判明した。
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