研究概要 |
本年度は以下の3点について検討を行ない、成果を得た。 研究代表者はアスパラギン結合型糖鎖においてこれまで最大の問題点とされてきたβ-マンノシド部分の立体選択的構築について,C-2位にp-メトキシベンジル基を有するマンノース供与体を利用する分子内アグリコン転移反応が有用であることを明らかにしてきた。本年度はこの知見をもとに、より高次な天然型糖鎖への展開を目指し検討を行なった。その結果、アスパラギン結合型糖鎖にしばしば見られるバイセクト型N-アセチルグルコサミンを含むコア構造に立体選択的合成を達成した。 癌胎児性抗原との関連で注目され、アスパラギン結合型糖鎖の末端構造としてしばしば見られるポリラクトサミン系糖鎖の合成に関し、以下の成果を得た。糖鎖の合成においては保護基の適切な選択がその成否に重要であるが、既存の保護基では到達可能な糖鎖構造に限界があると予想されうる。本研究ではアミノ基の保護基としてこれまで用いられてきたフタロイル基に代わる新しい保護基の開発を行なった。その結果、既存のフタロイル基と類似の性質を有し遥かに温和な条件で除去が可能な4,5-ジクロロフタロイル基を開発した。またポリラクトサミン系糖鎖の固相合成に関する基礎検討を行ない、トリクロロアセトイミデ-トを利用するグリコシル化反応が有効であることを見出した。 当研究室で開発した、オルトゴナルグリコシル化と呼ばれる糖鎖の効率合成に有効な方法論を応用し、高分子担体上での糖鎖合成への展開を試みた。その結果、糖タンパク質部分構造の迅速合成に成功した。
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