研究概要 |
本年度は以下の3点について検討を行ない、成果を得た。 糖鎖合成化学において最大の問題点とされてきたβ-マンノシドの立体選択的構築について,C-2位にp-メトキシベンジル基を有するマンノース供与体を利用する分子内アグリコン転移反応が有用であることを明らかにしてきた。本年度はその概念を更に進歩させ、C-2位置換基を高分子担体に結合させたマンノース供与体を合成し、これを用いるグリコシル化反応を行なった。この反応においては望むグリコシル化生成物のみが特異的に高分子担体から遊離し、分離精製を著しく簡略化することができた。 前年度は糖化学におけるアミノ基の保護基として、フタロイル基が広く用いられてきた。しかし、フタロイル基はその除去にしばしば激しい反応条件が要求されるため、複雑な糖鎖の合成においては問題となっていた。このような観点からフタロイル基に比べて容易に脱保護が可能と考えられる4,5-ジクロロフタロイル基を開発してきたが、本年度はこの保護基の性質及びオリゴ糖合成における有用性を更に検討し、複合型糖タンパク糖鎖の末端構造の構築に応用した。 また糖鎖の固相合成に関する基礎検討の一環として、オルトゴナルグリコシル化反応及びこの概念に基づく高分子担体上での糖鎖合成を行なってきた。今年度はこれを更にシアル酸含有糖鎖に応用すべく、高分子担体に結合させたシアル酸供与体を合成し、これを用いる高立体選択的グリコシル化反応を行なった。
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