本年度は以下の3点について検討を行ない、成果を得た。 β-マンノシドの立体選択的合成は糖タンパク質及びそれに関連する分子プローブの構築に極めて重要であり、糖鎖合成化学における最大の問題点の一つであった。我々は前年度までの研究によってC-2位にp-メトキシベンジル基を有するマンノース供与体を利用する分子内アグリコン転移反応が有用であることを明らかにしてきた。本年度はこの反応を応用し、糖タンパク質における重要な基幹構造であるフコースを含む6糖をアスパラギンに結合した形で完全な立体及び位置選択性制御のもとで合成した。 更に上記反応についての基礎的検討を継続的に行ない、合成小間体の立体化学を明らかにするとともに、適当な保護基を選択することにより大幅に効率が向上することを見出し最適化した条件下で80%を越える収率を実現することができた。 また糖鎖の固相合成に関する基礎検討のー環として、オルトゴナルグリコシル化反応及びこの概念に基づく高分子担体上での糖鎖合成を行なってきた。今年度は固相でのグリコシル化反応の立体選択性を液相法との比較のもとで検討し、固相反応においても溶媒効果が重要な因子として作用することを明確にした。
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