コリン作動性神経終末におけるCa動態とアセチルコリン遊離機構の研究

1996 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 08457591
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 桐野 豊 東京大学, 薬学部, 教授 (10012668)
• 研究分担者: 平嶋 尚英 東京大学, 薬学部, 助手 (10192296) ; 鈴木 利治 東京大学, 薬学部, 助教授 (80179233)
• キーワード: 神経前終末 / アセチルコリン遊離 / カルシウムチャネル / 電気器官 / アデノシン / リン脂質非対称分布

研究概要

1.シビレエイ電気器官神経終末におけるL型Caチャネルの存在と役割
シビレエイ電気器官からのアセチルコリン遊離に対するL型Caチャネルのブロッカーであるcalciseptineの効果を調べた。その結果、calciseptineによってアセチルコリン遊離が抑制され、最大阻害が約20%、IC_<50>が約3μMであった。また、P型のCaチャネルの存在をAgatoxin IVAによる阻害から確認した。こうして、シビレエイ電気器官神経終末には、N型に加えて、P型、L型Caチャネルが存在し、アセチルコリン遊離に関与している事が明らかとなった。
2.シビレエイelectro-motoneuronのCaチャネルのクローニング
シビレエイ電気器官終末のCaチャネルを分子レベルで調べるためにシビレエイの電気葉からmRNAを抽出し、RT-PCRを行ったところ、L型Caチャネルと思われる配列とN型Caチャネルと思われるcDNAの配列の一部が明らかとなった。
3.シビレエイ電気器官神経終末からのアセチルコリン遊離に対するアデノシンの修飾作用とその機構
シビレエイ電気器官シナプトソームからのアセチルコリン遊離に対するアデノシンの作用について調べた。その結果、アデノシンは神経終末のアデノシンA1受容体を介してアセチルコリンの遊離を阻害し、一方,A2受容体を介して遊離を増強する事が明らかとなった。さらに、この作用機構について検討したところ、A1受容体による阻害はN型Caチャネルの阻害によって、A2受容体による増強はP型Caチャネルの活性化によって引き起こされる事が明らかとなった。
4.シビレエイ電気器官シナプトソームとシナプス小胞膜のリン脂質非対称分布
蛍光ラベルしたリン脂質を用いてシビレエイ電気器官のシナプトソームとシナプス小胞膜の脂質2重層膜の内側層と外側層でのリン脂質の非対称分布を調べた。その結果、シナプトソーム形質膜及びシナプス小胞膜ともに細胞質側層にフォスファチジルセリン(PS)が多く分布していることがわかった。

研究成果

• [文献書誌] 桐野 豊: "膜電位イメージング法によるナメクジ中枢神経系における嗅覚情報処理機構の研究" ファルマシア. 32(3). 37-40 (1996)
• [文献書誌] Chie Fujiwara-Hirashima: "A Voltage-dependent Anion Channel from Tetrahymena Ciliary Membrane Incorporated into Planar Lipid Bilayers" Biochim.Biophys.Acta.1280(2). 207-216 (1996)
• [文献書誌] 川原 茂敬: "膜電位感受性蛍光色素を用いたナメクジ中枢神経系の解析" バイオイメージング. 5(1). 1-6 (1996)
• [文献書誌] Shoichi Toda: "Optical Recording of Neural Activity in the Olfactory Center of a Terrestrial Slug,Limax marginatus" Bioimages. 4(1). 33 (1996)
• [文献書誌] Satoshi Watanabe: "Development of Low Magnesium-induced Spontaneous Synchronized Bursting and GABAergic Modulation in Cultured Rat Neocortical Neurons" Neurosci.Lett.210(1). 41-44 (1996)
• [文献書誌] Tetsuya Kimura: "Spatial and Temporal Analysis of Odor Response in the Olfactory Center of the Terrestrial Slug,Limax marginatus" Proc.Internatl.Symp.Bioelect.Mol.Elect.Dev.140-141 (1996)
• [文献書誌] Yutaka Hirakura: "Selective Interaction of Synthetic Antimicrobial Peptides Derived from Sapecin B with Lipid Bilayers" J.Biochem.120(6). 1130-1140 (1996)
• [文献書誌] Atsuhisa Tomita: "Removal after Addition of NO-generating Agents and 8-Bromo-cyclic GMP Cause Morphological Change of Cultured Cerebellar Astrocytes" Brain Res.(印刷中). (1997)
• [文献書誌] Shigenori Kawahara: "Comparative Study on Oscillation in the Procerebrum of the Terrestrial Slugs Incilaria bilineata and Limax marginatus" J.Exp.Biol.(印刷中). (1997)
• [文献書誌] Toshiharu Suzuki: "Phosphorylation of Alzheimer's-Amyloid Precursor-like Proteins" Biochemistry. (印刷中). (1997)
• [文献書誌] Yutaka Kirino: "Activation of Adenosine A1 and A2 Receptors Differentially Modulates Acetylcholine Release from Electric Organ Synaptosomes" Role of Adenosine in the Nervous System. (印刷中). (1997)
• [文献書誌] Hiroshi Tokumaru: "Involvement of calciseptine-sensitive calcium channels in the evoked a acetylcholine release from electric organ synaptosomes" Biol.Pharm.Bull.(印刷中). (1997)
• [文献書誌] 桐野 豊: "情報と薬学いま(CD-ROM)" 情報薬学研究会, (1996)
• [文献書誌] 桐野 豊: "カルシウムシグナリング"カルシウムの物理化学的性質"" 培風館(印刷中), (1997)