研究概要 |
高齢化社会を迎え、これに伴う解決すべき医療福祉の問題が山積みしている.特に,アルツハイマー病に代表される老人性痴呆の問題は年々深刻化し,21世紀の科学は脳の時代とも言われている.最近,ヒトを含む哺乳類の脳内に末梢血中の10倍以上ものステロイドホルモン(neurosteroids)が見い出され多大の注目を集めている.これらは17-あるいは20-オキソステロイドの遊離型,サルフェート,脂肪酸抱合型,スルホリピッド抱合型などより構成されており,老化に伴い脳内に蓄積されるアミロイド蛋白との結合も考えられている.このように,neurosteroidsは脳機能の鍵を握る物質と考えられているものの,その存否,存在量,意義など不明な点が多い. 以上の知見を踏まえ,本年度はまずラット脳を用いてneurosteroidsの存否に検討を加えた,すなわち,主としてHPLC及びLC/MSを手段として検索したところ,報告されているpregnenolone,dehydroepiandrosteroneなどが確認されると共に,新たに脂肪酸抱合型であるpregnenolone 3-stearateの存在を明かとすることができた.また,定量法の開発も企て,蛍光誘導体化法によりpregnenoloneのそれを確立した.さらに,本法をラット脳へ適用したところ,報告値より著しい低値を示す個体が多く,意外な結果が得られた.このことに関しては,次年度以降の大きな課題となった.
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