研究概要 |
脳内ステロイドホルモンの化学構造は比較的簡単な17-又は20-オキソステロイドよりなることが知られている.しかし,遊離型のみならず硫酸あるいは脂肪酸抱合型などとしても存在し複雑であるとされているが,詳細については明らかでない. そこで,HPLC,LC/MSを駆使してラット脳を検索したところ,pregnenolone,dehydroepiandrosteroneの3-stearate,-palmitate(計4種)を同定することに成功した.また,脳内におけるpregnenolone,dehydroepiandrostrone,pregnenolone 3-sulfateの存在もLC/MSなどにより改めて確認した.この際,methyloxime誘導体へ導くことが,分子イオンピーク又は関連するピークの検出を容易とし,LC/MSでの同定上極めて有用なことも見出した. 一方,定量法の開発は以下のようにして行った.測定法は簡便性を考慮して蛍光検出HPLCを,測定対象は脳内ステロイドホルモン中で最も多くを占めるとされているpregnenoloneを,蛍光誘導体化試薬には1-anthroylcyanideを選択した,確立した分析法を実試料(ラット脳)へ適用したところ,文献記載値(測定法はRIA又はGC/MS)と符合する個体も見られたが,著しい低値を示す個体もあり,大きな疑問を生じるに至った.この原因がサンプル採取上の問題によるのか,あるいは報告されている分析法に問題があるのかは明らかでないが,いずれにしてもその生理作用と共に解決されるべき重要な課題を提起したことになる.このように,本研究は今後の脳内ステロイドホルモンの研究に一つの方向を示唆したものとして評価される.
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