経肺投与のための粉末及び水性懸濁エアゾール型薬物送達システムの開発

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 08457595
• 研究機関: 岐阜薬科大学
• 研究代表者: 川島 嘉明 岐阜薬科大学, 薬学部, 教授 (30082978)
• 研究分担者: 山本 浩充 , 助手 (30275094) ; 竹内 洋文 , 助教授 (50171616)
• キーワード: 粉末吸入製剤 / 経肺投与 / 水性懸濁エアゾール / 高分子ナノカプセル / 乳酸・グリコール酸共重合体 / ネブライザー / インスリン / 表面改質

研究概要

モデル薬物粒子としてプランルカスト水和物(抗喘息薬)を使用し、ドライパウダー吸入製剤(DPI)のための分散性に優れた粒子の設計法の開発を表面改質法を中心に行った。改質剤としてコロイダルサイズの親水性軽質無水ケイ酸、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート(HP-55)ナノスフェアーを使用し、前者は高速楕円ローター型粉体複合化装置により、後者は凍結乾燥や噴霧乾燥法を採用し、所期の目的に合致した粒子を設計することができた。HP-55改質粒子のDPIをモルモットに経肺投与した所、未改質品に比べて薬効が増強し、静注よりも小さな50%有効薬物濃度を示した。以上より本粒子設計法がin vivoにおいても優れた薬理効果を示す理想的な手法であることが明らかになった。
インスリンを封入した乳酸・グリコール酸共重合体ナノカプセルを水中エマルション溶媒拡散法により開発した。本・カプセルは水への再懸濁性に優れ、かつ薬物放出制御能を有する。更に、水性懸濁液を篩式超音波ネブライザーで噴霧し、in vitroにおける肺内到達性を評価した結果、粒子がサブミクロンサイズであるため通常の薬液を噴霧した場合と同様な肺内到達性を示した。水性懸濁噴霧液をモルモットに経肺投与した所、インスリン溶液を投与した場合に比べ、著しい血糖低下作用とその持続化が見られた。これは、粒子が肺深部に到達し、持続的に薬物を放出したためと考えられる。本ナノカプセルの調製法及び投与法を用いることで、ペプチドの非注射型DDSの開発が可能なことが示された。

研究成果

• [文献書誌] 川島 嘉明等: "Effect of surface morphorogy of carrier lactose on dry powder for inhalation property pranlukast hydrate" Int.J.Pharm.172. 179-188 (1998)
• [文献書誌] 川島 嘉明等: "Design of inhalation dry powder of pranlkast hydrate to improve dispersibility by the surface modification with light anhydrous silicic acid(AEROSIL200)" Int.J.Pharm.173. 243-251 (1998)
• [文献書誌] 川島 嘉明等: "A new powder design method to improve inhalation efficiency of pranlkast hydrate dry powder aerosols by surface modification with hydroxypropylmethyl cellulose phtalate nanospheres" Pharm.Res.15. 1748-1752 (1998)
• [文献書誌] 川島 嘉明等: "Surface-modified antiasthmatic dry powder aerosols inhaled intratracheally reduce the pharmacologically effective dose" Pharm.Res.15. 1753-1759 (1998)
• [文献書誌] 川島 嘉明等: "Pulmonary delivery of insulin with nebulized DL-lactide/glycolide copolymer (PLGA) nanospheres to prolong hyperglycemic effect" J.Control Release. (受理). (1999)
• [文献書誌] 川島 嘉明等: "造粒プロセスの最新動向と応用技術" 技術情報協会, 27 (1998)
• [文献書誌] 川島 嘉明等: "粒子設計工学" 粉体工学会, 20 (1999)