研究概要 |
1. レシチン膜マイクロカプセル(SL-MC) 膨潤型のSoybean lecithin-cholesterol-stearic acid-PVP系(重量比5:5:2:5)の混合物を膜剤として,Gd化合物にはガドベンテト酸(Gd-DTYfVPA),そのジメグルミン塩(Gd-DTPA-DM),ガドベンテト酸ステアリルアミド(Gd-DTPA-SA)を用いてマイクロカプセルを調製した.水溶性2化合物は単純なsustained-release特性を示したが,不溶性Gd-DTPA-SAは薬物層にSLを添加していくことにより二次分散した.今後,さらに組織内浸透性を達成すべく,有効な粒子径を持つ二次粒子を生成するデバイスとして機能化するには重要な知見である. 2. エマルション(nanoLE) 前年度のHCO60-nanoLEの薬物含量を2倍に高めた処方により,D179 melanoma 移植ハムスターで,腹腔内投48時間後の腫瘍内濃度を107μgGd/g,Tumor/Blood比を13.7にすることに成功した.これは濃縮Gd-157を用いれば治療レベルに達している.しかし,肝臓内蓄積性が著しく高かったため,生体内で比較的速く分解されるGd-DTPAのステアリルアルコールとのエステル(Gd-DTPA-SE)を用いたところ,腫瘍蓄積性は著しく低下した.高い腫瘍蓄積性を示しながら肝取り込み回避可能にする製剤設計が今後の課題である. 3. デボ製剤用微粒子 SCC-VII偏平上皮癌皮下担癌雄性C3H/HEマウスにキトサンナノ粒子(nanoCP)を腫瘍内投与し,腫瘍成長抑制効果のGd投与量依存性を調べた.効果は600μgGd/gまでは投与量依存的に増大し,それ以上では頭打ちになった.このnanoCPを用いた研究はGdNCTによる固形癌治療の最初の成果となった.Gd-DTPAはnanoCPから緩衝液中では溶出せず,血中では比較的速く溶出したが,このことの腫瘍成長抑制効果への寄与,また,nanoCPの細胞内取り込みの有無など,その作用メカニズムの詳細な検討,さらに,経血管用製剤とするための微粒子化,溶出の制御法の検討が今後の課題である.
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