研究概要 |
マクロファージによるアポトーシス細胞の貧食応答は補体活性化により亢進される Tリンパ球系の培養細胞,Jurkat,を蛋白合成阻害剤の存在下で培養すると、アポトーシスにより死滅する。この細胞をマクロファージに加えても、ほとんど貧食されない。しかし、アポトーシス細胞をヒト血清で前処理したものは、速やかに貧食されるようになった。加熱処理したヒト血清やEDTA-添加血清で処理したアポトーシス細胞では貧食亢進は見られなかった。これは、アポトーシス細胞がヒト補体系を活性化し、補体C3bで標識されるために、マクロファージの補体レセプター,CR3/CR4,を介した貧食応答が亢進した可能性を示唆した。そこで、CR3/CR4を特異抗体でブロックしたところ、貧食応答が阻害された。さらに、C3bに対する抗体添加によっても貧食応答が阻害された。これらの知見から、アポトーシスに伴って自己補体活性化因子が膜表面に露出し、自己補体を活性化し、オプソニン作用のあるC3bフラグメントがアポトーシス細胞表面に結合し、CR3を介したアポトーシス細胞の貧食応答が亢進したことが明らかになった。 抗ガン剤処理によりアポトーシス死を起こしたガン細胞も自己補体を活性化する ヒト肺ガン由来の培養細胞を抗ガン剤のVincristinで処理すると、核の断片化を伴うアポトーシス細胞死を起こす。この死細胞をヒト血清処理すると補体を活性化し、補体フラグメント,C3bやiC3b,により標識されることを見いだした。この自己補体活性化の機構を検討し、ガン細胞膜表面の補体制御因子が減少していることの他に、未知の補体活性因子がガン細胞表面に発現している可能性を示唆する知見を得た。
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