研究概要 |
FGF(fibroblast growth factor)は多用な生理活性を示すペプチド性増殖因子である。申請者らは新規なFGFを単離する目的で、その構造上の類似性を指標にして,簡便に遺伝子検索ができる手法を独自に開発し,遺伝子検索を行い,新規なFGF関連遺伝子を単離した。さらに,この新規FGF(FGF-10)の発現の組織特異性,発達段階特異性やその生物活性を調べた。その結果,下記の点が明らかになった。 1.FGFファミリーペプチドの構造上の類似性を利用して,遺伝子の検索を行い,新規なFGF遺伝子をラット胎児より単離した。 2.新規なFGF遺伝子の構造解析により,そのFGFの全構造(215アミノ酸残基)を明らかにし,それをFGF-10と命名した。 3.FGF-10の発現の組織特異性,発達段階特異性をNorthern analysis調べたところ,胎児にも発現が見られるが,成体では肺,脂肪組織などの限られ組織のみに発現し,ユニークなFGFであることを明らかにした。 4.FGF-10 cDNAを動物細胞発現vectorに組込んで,COS-1細胞でFGF-10タンパク質を産生させた。組み換えFGF-10の細胞増殖活性を調べたところ,線維芽細胞に対しては増殖活性を示さなかったが,上皮細胞には増殖活性を示した。このような増殖活性はFGF-7と類似している。
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