研究概要 |
申請者らが最近発見したヒト血液タンパク質群(IHRPとPHBP)の生理機能解明を目的とした.特に炎症との関連に注目して,詳細な解析のために実験動物(具体的にはマウス)系の確立を本年度の主要目標とした. 1.マウスIHRPの精製:マウスにテルピン油を投与すると2日後には血中濃度が10倍近くまで上昇し、IHRPが代表的な急性期タンパク質であることを証明できた。次にこのマウス血液からIHRPの精製して抗体を調製した.これにより炎症マウスにおける組織免疫染色が可能となり,現在解析を進めている. 2.マウスIHRPcDNAクローニング:ヒトIHRPcDNAをプローブとしてマウス肝cDNAライブラリーからクローニングに成功し、全cDNA塩基配列を決定した.ヒトとマウスIHRPのアミノ酸配列を比較すると,約70%の相同性を示したが,相同性の低い約100アミノ酸残基からなる領域があり,カリクレインなどに感受性が高い部位に対応した.その生理的意義に興味がもたれる. 3.マウスPHBPcDNAクローニング:ヒトPHBPcDNAをプローブとしてマウス感cDNAライブラリーからクローニングに成功した.ヒトとマウス間ではアミノ酸配列に約70%の相同性がみられた.マウスのcDNAが得られたことから,組織のin situハイブリダイゼーションが可能になり,現在解析を進めている. 4.ヒトPHBPの遺伝子構造:Bacゲノムライブラリーを用いて全ゲノム構造を決定した.染色体座位は10q25であり,ゲノム長は約35kb,15エクソンより構成されていた.エクソン構造は,血液凝固XII因子と似ていた. 5.ヒト炎症時の血中IHRP濃度の変動:手術患者の血液を解析したが,多数の分解断片がみられ,その意味を解明できなかった.今後を検討を続けたい.
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