我々は最近、ヒト血漿から新規タンパク質(IHRPおよびPHBP)を見出した。しかし生理機能がまだ不明なので、実験動物系を用いて生理機能の解析を試みた。 1 ブタ腎臓に検出されるIHRP結合タンパク質の解析:炎症を惹起させたマウス腎臓を抗IHRP抗体で組織染色すると強く染色されたが、IHRPの発現は肝臓でのみみられたので、腎臓が炎症時にIHRPを血漿から取り込むことを示唆した。そこで腎臓にはIHRP結合タンパク質があると予想して、ブタ腎臓からIHRPカラムを用いたアフィニティークロマトグラフィーを行った。そして特異的結合タンパク質を見出し、アミノ酸配列を決定したところアネキシンファミリーであることが分かった。現在、cDNAクローニングにより全構造を解析中である。以上の結果から、炎症時に腎臓はアネキシンを介してIHRPを取り込むと考えられる。 2 マウスPHBPの炎症時の体内動態の解析:PHBPの組織特異的発現をin situハイブリダズ法で解析して主要発現組織は肝臓と腎臓であることを確認した。次にPHBPは、炎症時にマウス血中で活性化体が出現するという興味深い知見を得た。PHBPはセリンプロテアーゼであるが、正常時は1本鎖のプロ体として存在しており、1カ所切断を受けて初めて酵素活性を発現する。すなわち炎症により切断反応が亢進している。この切断酵素の解明を現在進めている。 3 組換えマウスの作成への準備:組換えマウスの作成に必要なマウスPHBPのゲノム決定を行った。その結果、ヒトゲノムにおいてイントロン境界がGT/AG則に合わない3カ所が、マウスでも保存されているという知見が得られた。来年度はトランスジェニックマウスの作成を計画している。
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