研究概要 |
IHRPは、インター-α-トリプシンインヒビター重鎖と相同性を示すヒト血液タンパク質であり、1994年に我々が発見した。PHPBは、ヒアルロン酸に結合するヒト血漿タンパク質であり、1995年に我々が発見した。両者とも生理機能が不明なので、その解明を目指した。IHRPに関しては、昨年度にマウス実験系を確立し、炎症時、腎臓にIHRPが蓄積することを見出したので、本年度はその解析を続行した。PHBPに関しては、マウス胎児期の発現が少ないため、組み換えマウスが作成可能と判断しその作成に着手した。 1) 炎症惹起時におけるマウス腎臓へのIHRP蓄積機構 テルペンチン投与により炎症を惹起したマウスを免疫組織染色法にて各組のIHRPの存在を調べたところ、肝臓と腎臓が強く染色された。しかしmRNA発現は肝臓だけなので、腎臓は血中IHRPを取り込んでいると推定した。そこで腎臓におけるIHRP結合タンパク質を調べ、アネキシンが結合することを見出した。次にアネキシンのアミノ酸配列を決定したところ、既知のマウス・アネキシンではなく、ヒトアネキシンVと高い相同性を示した。この結合の生理的に意味に関して現在さらに検討中である。 2) PHBP組み換えマウスの作成 研究計画ではトランスジェニックマウスを作成する予定であったが、最近の急激な技術の進展を考慮してノックアウトマウス作成へと計画変更した。トランスジェニックの場合にはc DNAでよいのだが、ノックアウトの場合には、ゲノムDNAを必要とするため、まずマウスPHBPゲノムクローニングから開始した。エクソン1,2,3を含む上流ゲノムが得られたので、その部分でノックアウトマウス作成用のベクター構築を進めており、ほぼ完成した。近日中にES細胞レベルでのノックアウトを試みる予定である。
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