申請者らが1994年と1995年に発見したヒト血液蛋白質群(IHRPとPHBP)の生理機能解明を目的とした。 1. IHRPに関する研究 (1) 蛋白質構造解析:ヒトIHRPは約900アミノ酸残基の一本鎖蛋白質である。ブタとマウスIHRPもcDNAクローニングし、三者は共に約70%の相同性を示し、中央部にプロテアーゼで切れやすい部位をもつ。 (2) 遺伝子構造解析:ヒトゲノム構造を決定したところITI重鎖ゲノム構造と70%の部分で似ていた。 (3) 生理機能解析:ブタの代表的な急性炎症期蛋白質であると海外から報告されたが、ヒトでは証明できなかった。マウスに炎症を惹起すると、腎臓にIHRPがアネキシンと結合して蓄積することを見出した。生理機能は依然不明であるが、最近ドイツから肝炎ウイルス抗原との結合活性が報告され興味がもたれる。 2. PHBPに関する研究 (1) 蛋白質構造解析:構造はN末より3個EGF、1個クリングル、C末にセリンプロテアーゼドメインをもつ。マウスPHBPもcDNAクローニングして約70%の相同性のあることを明らかにした。 (2) 遺伝子構造解析:ヒトゲノム構造を決定したところ、凝固因子XIIと似ていた。マウスPHBPゲノムもクローニングして、現在、ノックアウトマウスを作成中である。 (3) 生理機能解析:Arg残基のC末側ペプチド結合を加水分解するプロテアーゼであった。血中では一本鎖の不活性型として存在し、プロテアーゼで特異的切断を受けて酵素活性を示す。活性化機構は、XII因子と似ており、自己活性化・不活性化が速やかに進行する。PHBPの本来の基質に関してはまだ不明である。
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