研究概要 |
ラット肝細胞質にNADPH依存性のUQ-10 reductaseを見出し、2種のアフィニティクロマトグラフィを用いて約300倍に精製した。精製酵素は、SDS-PAGEで単一バンド(MW.49kD)を示し、リン脂質膜内UQ-10を還元した。至適pH7〜8、至適温度35〜40℃、Km(μM)は312±17(NADH)、20.6±1.2(NADPH)で、NADPHに強い親和性を示した。本酵素は、(a)Dicumarol存在下で培養した肝細胞が正常にUQ-10を還元すること、(b)UQ-10投与が本酵素活性を特異的に上昇させ、(c)ラジカル性細胞障害抵抗性を高め、また、(d)過酸化に伴う細胞内ビタミンCやグルタチオン消費は節約しないがα-トコフェロール消費を節約すること、などから細胞内UQ還元の中心酵素で、特に膜構造内での抗酸化に働くことを明らかにした。UQH_2-10の抗酸化作用を生体レベルで確かめるため、成人健常男子7名に自転車エルゴメーターで運動負荷したところ、VO_2max時には血清乳酸値の上昇とUQH_2-10の有意の低下及び対応量のUQ-10の上昇を認めた。肝は、血液循環へのUQ分泌、回収系であるので、肝UQ redox cycleは全身のラジカル消去系としても重要な役割を担っていると推定された。 新規ユビキノン類縁体を合成し、抗酸化作用、UQ関連酵素への作用、グリア細胞NGF産生促進作用を調べた。炭素数8〜12の直鎖を持つ1,4-ベンゾキノン誘導体には、ビタミンEより強い抗酸化作用を有しミトコンドリア呼吸鎖には作用のないものがあった。また,1,4-ベンゾキノン誘導体の呼吸酵素及び脂質過酸化への影響を73種の電子反応指標を用いてQSAR解析を行い、統計的に有意な数式モデルを作成した。薬理作用の強いUQ類縁体の効率的なドラッグデザインへのこの数式モデルの応用が期待された。
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