研究概要 |
(E)-アルケン型ジペプチドイソスター(EADIs:(E)-alkene dipeptide isosteres)は数多くのジペプチドイソスターの中でも、ペプチド結合との構造的相同性が非常に高く、ペプチドリード化合物への応用が期待されている。しかしながら、その立体制御が非常に困難なため高収率かつ高立体選択的な合成法は確立されていなかった。我々は、本研究においてL,L-、L,D-、D,D-、D,L-typeの4種類のホモキラルなEADIsの実用的な立体制御合成プロセスを確立した。L-アミノ酸を原料として既知の反応により4種類のジアステレオ混合物として得られるγ,δ-epimino-α,β-enoatesをPd(0)触媒で異性化すると、γ,δ-cis-epimino-(E)-α,β-enoatesが優位に高収率で得られる。この鍵合成中間体γ,δ-cis-epimino-(E)-α,β-enoatesを基質として、有機銅試薬を用いるanti-SN2′反応によりL,L-type EADIsが合成できる。また、同一の中間体γ,δ-cis-epimino-(E)-α,β-enoatesをMeSO_3Hで処理すると位置および立体選択的開環成績体γ,δ-syn-δ-amino-γ-mesyloxy-(E)-α,β-enoatesが定量的に生成し、同様に有機銅試薬を用いればL,D-type EADIsが得られる。D-アミノ酸を出発物質として同様の反応を行えば、D,D-typeおよびD,L-type EADIsを立体選択的に合成できる。 上述の合成法を応用して,bombesinのC末端を(E)-アルケンイソスターで置換した6種類の(E)-alkene bombesin isosteres(EABI 1-6)を合成し、活性評価を行った。アミラーゼ分泌抑制作用において、EABI-1はこれまで最も強いアンタゴニスト活性をもつと報告されているRBI(Reduced-amide Bombesin Isostere)の約10倍のアンタゴニスト活性を示し(IC_<50>=4.66nM)、しかも1μMの濃度で全くアゴニスト活性を示さなかった。しかしながら、合成したEABI誘導体のいずれも膵癌由来細胞株(Panc-1,Mia Paca-2,AsPC-1)および小細胞肺癌由来細胞株(NCI-N417,H526)においては期待した抗腫瘍活性は認められなかった。
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