研究概要 |
我々は,現代物理学的方法論(主に量子力学)とファジ-データ処理法を融合させた,全く新しいデータ解析法・システム動分析法(量子システム分析法法と名づけた)を開発した.この方法論は,代表的な多変量解析(因子分析や回帰分析)の手法や,既存の数理生態学・人口動態論とも異なっている.量子システム分析法は,データに曖昧さが存在し,サンプルが如何なる母集団に従ったとしても分析可能であり,系の時間発展記述でき,将来予測・推計等も可能であるうえ,全体としてまとまった体系をなしている.一般的な波動方程式から出発し,Fokker-Planck方程式とSchrondinger-方程式を考慮して,近似的に確率密度関数がSchrondinger-方程式に似た式に従う事を仮定した.我々のシステム分析法が,量子力学と似た基本方程式に基づくために,物性論・原子核等の物理学で蓄積されてきた解析処理手法が適用できるという長所がある.試しに我々は,有名なSchrondinger-方程式の数値解析法用いて,我々のシステム方程式を医療の分野(消化器疾患・悪性新生物等の受療率)の将来予測)に適用し過去3度の厚生省のデータに基づき,平成3年度の上記疾患の予測を行い,実際のデータと良い一致を示すことを確認した.さらに,データの曖昧さを処理するために,ファジ-微分・積分(実際にファジ-微分・積分と呼ばれているものと内容が異なる)を新たに定義して,データの平滑化処理を行った.この我々の処理は,一般の移動平均法よりデータ各点の追従性に優れ,さらに研究者がフィッテッング関数を指定する必要がなく,優れた関数フィッテッング法としても利用可能である.このシステム方程式は,ハミルトニアンを持つために,システム構造解析・動態分析及び構成要素間に相互作用が存在する場合にも適用でき,実際に都市間の人口移動増減問題に応用し,良く知られた関係式を再現できた.システムに加わる各種の操作・影響を演算子として記述し,ファインマン図形の様なダイアグラムによる解析を可能とすることが今後の課題である.
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