〈背景・目的〉医療サービスの質と効率の向上への社会的要請は益々高まっており、医療の受け手である患者の満足度はサービス評価の一つの重要な指標として位置づけられるようになってきている。本研究は、医療に対する患者の満足度について信頼性、妥当性、有用性の高い測定法を開発し、さらにそれを用いて、患者満足度の規定要因を解析することを目的とする。 〈対象と方法〉調査対象は病院医療に対する患者および職員のアンケート調査研究に協力の得られた76病院で、所在地は北海道から沖縄までにおよぶ。50床未満から超1000床、国公立民間の設立主体の病院を含んでいる。中小病院を除く病院は臨床研修指定病院から無作為抽出した病院の内、参加承諾の取れたものである。入院医療に対する患者満足度調査票は過去5年間の調査を経て信頼性と妥当性を改善すべく改訂を重ね開発した。調査期間中の全退院患者を対象に配布し郵送にて回収した。その回収率は約6割であった。 〈結果・考察〉綿密な内容分析と数回の調査・解析実績に基づく開発した患者満足度の調査票は、内容的妥当性、構成概念妥当性、因子的妥当性、内部整合性、再現性といった点で、十分に高い信頼性・妥当性を得ることができ、全国におよぶ種々のタイプの病院で利用可能性のあることが実証された。サブスケールのそれぞれは、病院間やグループ間の識別において、実質的でしかも統計的な有意差を呈した。サブスケール間の相関、総合評価の関連因子、などをみることがきた。解析結果を各参加病院にフィードバックの後に第2回目のデータ収集を進めているが、今後、医療サービスの質のより実質的・客観的指標との関係から妥当性の検証や時間縦断的調査による因果関係の方向性の検証を進める必要がある。
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