研究概要 |
【背景・目的】患者による医療の評価あるいは満足度の客観的評価を、医療・サービスの質の保障と向上に活用する重要性はますます高まっている。本研究は、患者満足度測定の方法論を開発し、その影響要因を解析することを目的とする。また、医療技術よりも思いやり・優しさを重視する患者群と、逆に思いやり・優しさよりも医療技術を重視する患者群とにおける医療満足度の関連要因の差異を比較・検討した。 【対象および方法】調査期間中に合同調査参加病院(国公立33病院、民間43病院の合計76病院[平均病床数:484±256床])の対象基準を満たす全退院患者に自記式質問票を配布し回答率60%、5,814名より回答が得られた。調査項目は入院医療について総合評価、各領域における評価(健康の改善、医師・看護婦など病院スタッフのケアやコミュニケーション、説明、医療提供のシステム、入院生活の快適さ・利便性、病院の評判)、医療への期待・要望および患者属性である。質問票は高い妥当性と信頼性を持つにいたっている。 【結果・考察】患者満足度は年齢が高い層ほど高くなる傾向を示し、男性患者では医師に対する評価や病院の評判、健康の改善等、医療の質に関連する要因が、女性患者では医療スタッフとの関係が満足度と有意に関連していた。「思いやり重視群」(n=479)「技術重視群」(n=1,698)においては、前者で医療の総合評価に関連する要因は患者への配慮や思いやりおよび療養環境を反映する項目が説明因子として特定された。「技術重視群」では、医師の技能への信頼、病院の評判、体のなおり具合など、医療の技能的側面、医療技術水準への信頼に関する項目が説明因子として特定された。期待・要望の差異により患者満足の影響因子が異なることが概念にとどまらず実証的に示され、医療・サービス改善の実践に際しても本知見は有意義と思われる。
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