研究概要 |
1.遺伝子導入系の開発 AAVベクターによる遺伝子導入系を用いて、赤芽球系培養細胞を対象に発現効率や安定性の強化を目指している。そのためにグロビン遺伝子の組織及び時期特異的な発現に関与するLCRを構成する4箇所のDNaseI超感受性部位(HS1〜4)を種々組合わせ、これをβグロビン遺伝子に組み換えたコンストラクトを作成し、これを用いた組み換えAAVを調整した。赤芽球系培養細胞であるMEL細胞に感染させクローンを各コンストラクトにつき10個ずつ単離し、現在各クローンにおけるβグロビン遺伝子の発現を解析中である。 2.胎生型グロビン遺伝子の活性化 転写制御因子EKLFはGATA-1を介したLCRとの相互作用により、γ→βのスイッチングに関与しβグロビン遺伝子の発現に正に働いている。転写制御因子におけるトランスドミナントな変異によるスイッチングのモジュレーションの可能性を検討するために、EKLFのDNA結合能を保持したまま転写活性能をなくした変異因子の作成を行っている。 3.分子病態の修復 点変異(HbE変異,IVS-2内654位変異)が来す選択スプライシングのアンチセンスオリゴによる抑制を見るために、HeLa細胞核抽出液を調整してin vitroスプライシングの系を確立した。これを用いて変異により活性化された潜在スプライスサイトをカバーする18塩基のアンチセンス-2′-0-メチル オリゴリボヌクレオチドのスプライシングに及ぼす効果を解析し、オリゴの配列を含めた条件の至適化を試みている。またin vivoでの検討を行うために正常および各変異グロビン遺伝子をMEL細胞にトランスフェクションし、正常および変異mRNAの発現が見られるステーブルトランスフォーマントを単離した。
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