本研究はH19及びWT1遺伝子をターゲットとして、インプリンティングに重要なトランス及びシス因子を同定してヒトにおけるゲノム刷り込み機構の解明に迫ることを目的とした。 配偶子特異的メチル化に重要な配列として、特異な反復配列がマウスH19遺伝子プロモーター上流に同定されているが、これに対応するものとしてヒトH19遺伝子上流に我々が見いだした配列はマウスと全く相同性を示さなかった。そこで、これとは別の重要な配列が存在するのではないかと考え、H19遺伝子下流の解析を行い数種類の反復配列の存在を見いだした。 1.シス因子の同定 (1)H19遺伝子下流の反復配列をプローブとして、これに類似した配列を持つgenomic clone10種を単離した。 (2)このうちの1つは11p15.5に局在しGC-richな配列を持つことから、インプリンティングを受ける遺伝子が存在する可能性が示唆された。 (3)このクローンの20kbの塩基配列を決定し、コンピューター解析及びexon-trappingによりエクソンを割り出しRT-PCRにより遺伝子の存在を確認した。 (4)Northern blot解析で胎児脳(及び成人精巣)に2.8kb及び3.2kbのmRNAが発現していることを確認した。 (5)これとは別に、H19遺伝子領域内にH19とは逆向きに別の遺伝子が存在することを確認した。 (6)WT1 locusのシス因子の同定に向けて7例の品胎胎盤及び2例の4つ子胎盤を集積した。 今後、単離した遺伝子のエクソン内多型を捜しインプリンティングの有無を確認する予定である。 2.トランス因子の単離・同定 トランス因子の単離に向けてさらに3例の完全胞状奇胎を集めた。新しい遺伝子のインプリンティングの有無の確認作業が済み次第、トランス因子単離に着手する。
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