本年度は黒質線条体路に由来するニューロモジュリン(NM)が、線条体の全NMに占める割合を調べた。NMは片側前頭葉皮質吸引除去による皮質線条体路の破壊により51%、6-ハイドロキシドパミン(6-OHDA)による黒質線条体路の破壊により20%減少したが、カイニン酸注入による線条体内介在ニューロンの破壊では減少しなかった。NMの他に前シナプス膜に存在するシンタキシン、SNAP-25、そしてシナプス小胞に存在するシナプシンI、シナプトブレビン、シナプトタグミンも併せて測定した。 シンタキシン、SNAP-25、シナプシンIは皮質線条体路の破壊により、それぞれ38%、17%、31%減少したが、シナプトブレビンとシナプトタグミンは変化しなかった。黒質線条体路や介在ニューロンの破壊では、上記の蛋白は無変化だった。以上により、NMは神経線維の障害に鋭敏に反応し、、黒質線条体路に相対的に多く含まれている事がわかった。線条体は前頭葉の皮質下核であるので、皮質からの入力が優勢であり、黒質からの入力はそれに比べると小さいものであるが、NMが相対的に黒質線条体ドパミン神経に多く含まれているという私達の今回の実験から得られた結果から、黒質線条体ドパミン神経系はNMのもつ機能、つまり、神経再生能に富む可能性が示唆された。これらの結果は現在投稿中である。現在、黒質線条体ドパミン神経の再生について実験を行なっており、6-OHDAにより黒質線条体神経終末を破壊した後、経時的にNMの測定と併せて、NMとチロシン水酸化酵素mRNAを黒質で測定する予定である。
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