研究概要 |
今年度は6-ハイドロキシドパミン(6-OHDA)投与後に黒質ドパミン神経細胞のニューロモジュリン(NM)(別名,GAP-43)とチロシン水酸化酵素(TH)のmRNAの変化をアルカリフォスタファターゼ標識したオリゴヌクレオチドプローブを用いて検討した.一過性にドパミン神経終末は破壊されるが,神経細胞は逆行変性せずに徐々にsproutingすることが可能である12μgの6-OHDAを線条体に投与して,3日,14日,56日後の中脳ドパミン神経のNMmRNAとTHmRNA陽性細胞数をカウントした.線条体のTHが約半分に減少し,ドパミン神経終末が6-OHDAの直接の作用で破壊されている3日後では,NMmRNA陽性細胞数とTHmRNA陽性細胞数は軽度上昇していた.これは6-OHDAによる化学的軸索切断により何らかのシグナルが生じ,それが逆行性に細胞体に伝えられ,遺伝子からmRNAへの転写が促進したためと考えられた.56日たつと線条体内のNMとTHが徐々に回復し,ゆっくりとではあるがドパミン神経終末が回復していると考えられた.しかし,NMmRNA陽性細胞とTHmRNA陽性細胞は逆に約半分に減少してしまった.この時,黒質緻密層の神経細胞数は減少していず,一つの神経細胞あたりのこれらのmRNAの量が減少して測定感度以下になったため,陽性細胞数が減少したと考えられた.つまり,軸索が徐々に回復しているの,細胞体のmRNAはダウンレギューレートされていた.文献上,ヘテロ核mRNAはダウンレギュレートされていず,ノーザンブロティングでも同様の減少がみられることから転写レベルではなく,その後のmRNAファクトリーにおいてこのダウンレギュレーションが調節されていると考えている. 当研究は本年度で終了するが,今後,共焦点レーザー顕微鏡を用いて線条体におけるNM陽性かつTH陽性である軸索数を観察し,NMとドパミン神経のsproutingの関係を形態学的に解析したいと思っている.
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