研究概要 |
1.各種循環器疾患にCaやMgの欠乏が関与することが明らかにされてきたが、臨床検査におけるこれら陽イオンの適切な評価法は確立していない。そこで今回、全身レベルや細胞レベルでのCaやMgの代謝を臨床検査に応用発展させ、これらの異常が各種循環器疾患に存在するか否かを健常人と比較検討した。 2.各検査項目の関連性を検討したが、血清の各種電解質、すなわちCa,Mg,Na,K,Clのイオン化濃度の間に有意な相関は示されなかった。血清総Ca濃度とイオン化Ca濃度の間および血清総Mg濃度とイオン化Mg濃度の間にはr=0.5前後の有意な正相関が認められた。血清総Ca濃度と総Mg濃度はいずれも血清アルブミン濃度とr=0.2の弱い正相関を示した。血清イオン化Ca濃度およびイオン化Mg濃度はいずれも年齢と有意な相関を示さなかった。また、男と女の間に性差も認められなかった。 3.上室性不整脈患者の血清総Mg濃度と総Ca濃度は健常人と差を認めなかったが、血清イオン化Mg濃度は有意な低値を示した。赤血球内Mg濃度も低い傾向を示した。 4.高脂血症(高LDLコレステロールおよび高トリグリセリド血症)において血清総Ca濃度、総Mg濃度イオン化Ca濃度、イオン化Mg濃度、赤血球内Mg濃度、血小板[Ca^<2+>]i、血小板[Mg^<2+>]iはいずれも健常人と差を認めなかった。 5.二次性高血圧症で血清総Ca,Mg、イオン化Ca,Mg濃度、赤血球内濃度および血小板[Mg^<2+>]i、血小板[Ca^<2+>]iはいずれも健常人と差を認めなかった。 6.尿中Ca排泄量、Mg排泄量は虚血性心疾患、不整脈、高血圧症、高脂血症、糖尿病のいずれも健常人と差がなく、血清Ca、Mg濃度とは有意な相関を示さなかった。 以上より、通常のルーチン検査として測定される血清総Ca,総Mg濃度は各疾患において健常人と差を認めなかったが、上室性不整脈では血清イオン化Mg濃度の低下が認められ、その疾患の病因に関与している可能性が示された。
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