研究課題/領域番号 |
08457641
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
病態検査学
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研究機関 | 慶応義塾大学 |
研究代表者 |
渡邊 清明 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (20101983)
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研究分担者 |
川合 陽子 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (00129727)
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研究期間 (年度) |
1996 – 1997
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キーワード | erdothelium / shear stress / cytokine / tissue factor / tissue plasminogen activator / plasminogen activator inhibitor-1 / tumor necrosis factor / mRNA |
研究概要 |
血管内皮細胞が血栓形成に果たす役割は大きい。血管病変を診断するためには、その生理的な変動や病態を把握する必要がある。現在in vitroの実験系による血管病変に関する報告は増加しつつあるが、いずれも生体においての変化との解離が見られる。われわれは血流やサイトカインなど生理的に重要な因子の関与を捉えた実験系を組むことで、生体における変化が検討できると考えている。血管内皮細胞を培養し、回転粘度計を原理としたずり応力負荷装置のもとで、IL-1βやTNF-αなどの炎症性サイトカインの刺激をかけ、凝固線溶因子がどのように変化するか検討してきた。その結果、線溶系においては、t-PAとPAI-1の動態を検討したところ、ずり応力は線溶亢進に作用し、一方サイトカインは線溶阻止に働く。ところが、サイトカイン存在下においてもずり応力が存在すると、サイトカインは線溶亢進作用に変化し、血流の存在が抗血栓性の保持に重要な因子であることが判明した。凝固系においては、凝固の初期段階に重要な因子である組織因子(TF)を詳細に検討したところ、サイトカインは凝固活性を亢進させるが、血流はその亢進を抑制し抗血栓性に作用することが判明した。興味あることに、ずり応力とサイトカインを同時に負荷する系より、あらかじめずり応力を負荷した内皮細胞にサイトカインで刺激を与えたときの方が、その抑制は強いことが示された。これらは、活性・細胞内抗原量・細胞外放出量・膜表面発現・mRNAなどすべてにおいて認められ、transcriptionalレベルでの制御機構の存在が示唆された。血栓症などの血管病変は血管分岐部下流に好発する事からも、血流の存在が血栓制御機構や動脈硬化の中心的役割を果たす重要な生理的因子であることが判明した。血流の影響を受け発現が変化するt-PA・PAI-1・TFなどの検査は血管病変のマーカーとして有用であり、今後このような因子の更なる解明が重要であると思われた。
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