歯牙欠損による咬合欠陥と、同症例に対する咬合再建処置について臨床的に客観的な評価を行うことを目的として、残存歯列、同歯列の補綴的処置により再構成された再建歯列の咬合接触の歯列内咬合力分布、同力学的重心の位置的の推移、総咬合力の変化、ならびに同状態の機能筋活動状態の変化等を経時的、かつ臨床的に同時点での所見と対比し、従来主観的評価に依存していた問題をきわめて客観的に評価することを行った。今回は特に咬合支持域を構成する歯列内最後方大臼歯より欠損して行く、短縮歯列(両側性、および片側性)、対称性短縮歯列、非対称性短縮歯列を重点的に検索した。両側性については上、下顎それぞれ5症例について、現段階では装着当初より6カ月まで、片側性に関しては約10症例について装着当初より1.2年の経時的結果を統計学的にまとめ、その結果は1998年EPA(ヨーロッパ補綴歯科学会)において報告した。また口腔病学会雑誌に発表した。特に短縮歯列については健常歯列に比較し、咬合接触とその咬合力配分、その重心の推移に顕著な変化が見られ欠損歯列で放置された状態と補綴的に咬合再構成された場合と偏差が生体に及ぼす影響が極めて大きいことが明白になった。さらに我々の開発した咬合接触記録法は口腔内歯列模型上で経時的に観察、比較が可能であり、かつ測定時における咬合力が表示できることから補綴処置による効果の客観的評価として有効なばかりでなく、その後の処置経過を客観的に比較観察し得る評価方法として価値が確認された。現在これらのデーターと機能筋群の活動性、強調性、咀嚼効率等の相関関係等について検索中である。
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