パッシブソーラーハウスの欠点を改善するために、申請者が設計した東京都内の付設温室のある半地下室のある住宅を使用して、潜熱蓄熱体(18℃で相変化を起こす)を用いる、日射遮蔽装置を用いるなどして半地下室内の温熱環境改善の実験と理論計算を行った。評価は半地下室内にグローブ温度計を設置し、平均放射準度を知り、室内空気温度、相対湿度、室内風速からPMVを求めることにより行った。この住宅は温熱環境的には省エネルギーで比較的快適な居住環境が得られていることが実験結果から判明した。この住宅は発泡スチレンを用いて全面的に外断熱を行っている。昭和55年に竣工して以来の居住である。当時は石油危機の後でもあり、省エネルギーの思想が取り入れられた時代であった。それまで使用されていた余裕の係数などの見直しも行われた時代であった。このソーラーハウスでも余裕の係数を排除した。建設当初は床暖房もできたが徐々に配管その他の劣化も始まり余裕もなくなってきた。それと同時に室内の相対湿度の上昇が起こり、カビ発生が見られるようになった。この住宅では半地下室、地下室、一般階の居室があるが、それぞれの部屋で3年間にわたり落下菌、空中浮遊菌、壁の付着菌を継続的に測定した結果、部屋により明らかに真菌の種類、菌数に相異が現れた。この住宅のように高気密、高断熱になることで人間にとって一年中快適な環境で生活できるようになった一方真菌(カビ)にとっても発育しやすい温度環境、湿度環境ができた。このような住宅で継続して真菌の測定を行った例は少なく貴重な資料が得られた。
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