低温菌Bacillus pscychrosaccharolyticus由来アラニンラセマーゼ遺伝子をクローニングして塩基配列を決定すると共に、過剰発現株から容易に低温性アラニンラセマーゼを精製する条件を確立した。この精製酵素と、すでに精製済みのPseusdomonas fluorescens由来アラニンラセマーゼを用いた酵素化学的研究から、低温細菌由来アラニンラセマーゼは、耐熱性が低く、低濃度の有機溶媒や界面活性剤により容易に不活性化されることが明らかとなった。次に、食品への適用が可能なエタノールが菌体に与える影響を検討した。その結果、用いた低温細菌3株は常温細菌2株に比べ、5%エタノールによって多くのUV吸収物質が抽出されることが判明した。従って、低温細菌の細胞は常温細菌の細胞よりエタノールに対する感受性が高く、エタノールによって細胞が損傷を受けやすいと考えられる。続いて、低温細菌由来アラニンラセマーゼの菌体内における安定性を調べた。その結果、低温細菌由来のアラニンラセマーゼは常温細菌由来のものに比べ、菌体内においても35°C以上の温度で不活性化されることが判明し、精製酵素の熱安定性と一致した結果が得られた。また、細菌を低濃度(0.1%)のアルコールに懸濁した時、低温細菌の菌体内アラニンラセマーゼは、常温菌に比べ、著しく失活した。低温細菌のアラニンラセマーゼは、菌体内においてもエタノールに対する耐性が極端に低いことが明らかとなった。さらに、エタノールによる低温細菌の増殖抑制効果を調べた。その結果、低温細菌は常温細菌に比べ、低濃度のエタノールにより著しく増殖が抑制されることが判明した。なお、0.05%以下の低濃度の界面活性剤(SDS)によっても、エタノールと同様の増殖抑制効果が得られている。
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