物理ゲルの研究は、超高分子量ポリエチレンの溶液を急冷後乾燥させて作成したフイルムの超延伸性を溶液濃度を0.4〜1%に、急冷温度を0〜70℃まで変化させ、ポリエチレン、ポリプロピレンについて検討した。その結果延伸性は溶液濃度が高い場合は急冷温度が高いほうがよく、例えば1%の溶液では50℃での急冷が、0.4%では0℃が最適であった。この現象を解析するためにそれらの試料について未延伸での走査型電子顕微鏡観察をおこなった。その結果、フィブリル構造はスピノ-ダル分解に特徴的な連続した変調構造に類似した蜂の巣状の構造が出現し、その構造は冷却温度が低くなるにつれ密になった。しかし超延伸を保証するゲルの変形メカニズムについては報告例はない。そこで、乾燥ゲルフイルムの一軸延伸による高強力-高弾性率繊維のみならず、同時直交二軸延伸による高強力-高弾性率フイルムの作成をも目的とした。また変形時における分子鎖の配向ならびに高次構造の変形を複屈折法ならびに光散乱法により検討を試みているが、溶媒からの散乱が強くデータの精度に問題があり、この点については今後の検討を必要とする。PVAゲルは溶媒を充分含んだ状態でゴム弾性挙動を示し、約4時間の測定時間中に溶媒の蒸発量は極めて小さかった。従って、ゴム弾性の測定に充分な時間をかけることができる。PVAゲルの場合、常温及び-30℃で急冷したゲルは完全なゴム的挙動を示し、現在ゴム弾性の機能を有する架橋点が微結晶によるものかどうか検討中である。ポリエチレンについては乾燥ゲルフイルムを同時直交2軸延伸した。延伸は約9X9倍まで可能であった。力学的性質は一軸の場合に比して極めて低くかったが、市販のフイルムよりは弾性率は高かった。X線実験の結果、延伸にともなって分子鎖は膜面に平行に配向した。
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