1) 今回の調査研究では、わが国の実験・実験技術・実験機器・実験装置がどのような経緯で発達してきたかを総合的に検討した。その結果、明治期、大正期、昭和初期における実験機器製作技術発達史の枠組みを構成することができた。特に、明治以来、戦前における科学技術振興策には物質的基盤が欠落していたことを実証的に示すことができた。 2) 理化学機器メーカーによる実験機器類や資料の保存の状態はそれなりの努力が見られたが、国公立研究機関における実験機器類の保存状態はほとんど絶望的な状況であった。そこで理化学機器メーカーの協力を得て、戦前における実験機器・装置のデータベース化作業を集中的に実施した。このことにより、科学機器メーカーの技術分野や技術水準を輸入機器の技術レベルと比較対照することができた。そして、初等理科教育レベルでの実験機器製作はともかくも、高度な科学研究分野での機器類は全面的に外国技術に頼らざるを得なかったことを、実証的に示すことができた。 3) 篤志家的なメーカーや職人や研究者の努力が、東京を中心に、地方の大学へと広く展開していく状況も確認できた。研究諸機関が実験機器製作技術を重要視したり、機器メーカーと共同で実験装置を開発したりする姿勢は、今日いうところのプロジェクト研究のプロトタイプと見ることができる。プロジェクト研究の萌芽的段階と実験機器・装置の物質的基盤のバランスとして、研究水準を測定出来るのではないかと考える。今日のわが国の研究開発の特性分析に大きな手がかりを得たと考える。
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