実験1では、酸素摂取動態を検討するために、漸増運動負荷の後に漸減運動負荷(トライアングル負荷)を行った。その結果、漸減負荷時の酸素摂取量は、漸増負荷時の値より大きいことが明かとなった(これを過剰酸素摂取量と呼んだ)。漸増負荷時の酸素摂取量は、ある時間遅れを持つために酸素債を生じる。この成分を過剰酸素摂取量から除いたものが酸素負債であると考えられた。また、この成分には乳酸性と非乳酸性の酸素負債があると考えられるので、乳酸の動態をも検討した。その結果、漸増負荷時に生じた乳酸は漸減負荷時に有意に減少した。この減少によって、酸素負債の一部を説明できた。 実験2では、二酸化炭素排出動態を検討するために、強強度運動負荷を行った。その結果、二酸化炭素の過剰排出相が主に運動後の回復期に観察できた。これは、運動時に生じる乳酸の一部は重炭酸系によって緩衝されるが、その緩衝に係った二酸化炭素は、一旦、余剰成分として体内にとどまり、その後に過剰排出されるためであると考えられた。また、回復期の後半には、終末呼気二酸化炭素分圧が安静時より低下した。これは、過換気により生じたものと考えられた。また、この時期の二酸化炭素過剰排出は、生体内のpHの低下に対する呼吸性の代償作用であると考えられた。
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