はじめに;運動を開始すると酸素摂取量が急激に増加し、その後は、運動強度が低い場合には定常状態を示すが、高い場合には緩慢な増加を示すことは良く知られた事実である。この事実を、腕運動時に確かめた。またその腕運動時に軽強度の脚運動を同時に行った場合について検討した。 方法;被験者は、成年男子8名であった。 自転車エルゴメーターを用いて、脚での漸増負荷と腕でペダルを漕ぐ漸増負荷をそれぞれ行った。この両負荷時の酸素摂取量の最大値をそれぞれ、脚の最大酸素摂取量、腕の最大酸素摂取量とした。また、腕の最大酸素摂取量の60%の負荷で6分間の定常負荷運動を行った。さらに、脚の最大酸素摂取量の30%の運動負荷で脚の運動を行った。その運動開始後5分時から運動強度60%の腕運動を開始した。その後6分後に腕および脚の運動を同時に終了した。 安静時、運動時および運動回復時に酸素摂取量を測定した。また、乳酸値を安静時、運動回復直後、3、6、10分時に決定した。 結果と考察;腕運動と腕と脚の結合運動時の回復時の乳酸値を比較すると何れの測定値においても両者の有意な差は認められなかった。また、腕運動時と腕と脚の結合運動時の6分と3分時の酸素摂取量の差を比較すると両者の間には有意な差が認められた。 一般に脚運動負荷時の6分時と3分時の酸素摂取量の差が乳酸値と関係するとされている。したがって、腕運動負荷時での乳酸が生成されているときには、6分時と3分時の酸素摂取量の差が生じると考えられる。しかし、腕と脚の結合運動時との比較では、乳酸値に有意差はないが、酸素摂取量には差が生じていた。これは、乳酸がこの酸素摂取量の増加に関係しているとはいえるが、同時に結合運動時では何か他の因子が作用したために、腕のみの運動時より、その増加量が大きくなったものであると考えられよう。
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