本年度の研究では、中国の西安(長安)と洛陽付近の衛星画像を解析することによって、歴史地理学的な考察にどの程度の有効性があるかについて、検討した。 現在入手できる衛星画像において、比較検討したが、最も解像度が高いspotの画像を用いることによって都城プランの復原に有効であることが、確認できた。 漢の長安城については、外郭を画する「王渠」は、鮮明に判読可能であり、かつ都城内部を構成していた中心的な区域が、周辺地割と異なった状態で識別できる。これは、「講武殿」に相当するかは、さらに詳細に考察する必要があるが、発掘調査の成果と対応させることによって新しい知見が得られることが期待される。唐の長安城については、街区の区画は明確に読みとることができ、東限の羅城についても地割による痕跡が明瞭である。長安城の「皇城」と「宮城」の部分が現西安市の中心部と重複するために、地割から唐代の長安城の痕跡を識別することは困難ではあるが、しかし、画像に見られる地割が長安城のものがあることは予想できるので、さらに諸資料と比較することによって実態をはっきりと把握できるものと考える。とりわけマス目状の小区画を施している地割が判読され、これが、どのような施設(建築)であったか、検討課題として浮上した。 北魏洛陽城の痕跡が衛星画像からどの程度読み取れるかが、今年度の重要な課題の一つであった。北魏洛陽城は内城と外城からなることは、『洛陽伽藍記』から知ることができるが、内城の区画は画像からある程度判読できたが、内部の構造の宮城などは、決め手となる地割の検出に至らなかった。そらに外城についてもその範囲を特定することは不可能であった。しかし、これらの問題は、年次度になると、より解像度の高い画像が入手可能となるので、解決できることが期待される。
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