研究成果の概要は以下の通りである。 1. 今回の研究過程において、1960年代に撮影されたアメリカの偵察衛星写真(CORONA)が、歴史地理学的な景観復原に有効であることが判明した。しかし、撮影条件によって、判読が不能なものもあり、今後、高解像度の衛星画像が安価に入手できるようになることが期待される。 2. 全体的にみて、近代に都市化が発達した地域では、古代の都城遺構を検出すること難しいが、農耕地などでは、今回の試みが有効であることが確認された。今後の歴史地理学研究における衛星画像の利用を、より積極的にすすめる必要がある。 3. 衛星画像による東アジア都城復原の手がかりになるのは、考古学の発掘の成果であるが、同時に衛星画像によって遺構の存在を推定することもできた。 4. 中国については、従来の都城研究の成果をさらに詳細に検討することができたところもあったが、隋・唐の長安・洛陽城では、より鮮明な写真でないと、細部の復原が困難であることも確認した。 5. 朝鮮半島については、慶州に関しては撮影条件の良好な写真が入手できず、SPOT画像の解像度では十分に方格プランの復原はむずかしかった。扶余の王京の実体も衛星写真では、解決できない点がのこった。 6. 画像の判読結果と現地調査との対応は欠くことのできない課題であり、今後さらに、この方法の有効性を高めたい。
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