研究概要 |
1996〜1997年度の調査・研究によって得られた成果は以下の通りである。 1,民俗芸能は拠点でなく伝播=線で捉えることが重要で、そのことで民俗芸能の意味・意義が理解できる。 2,民俗芸能は、住民の生活・習慣、言語、労働、信仰、性別などと切り離して考えられない。 3,八重山の「ガ-リ-」→宮古島の「クイチャー」→沖縄本島の「カチャーシ-」→奄美大島の「六調」→九州西海岸の「ハイヤ節」、そして徳島の「阿波踊り」と、群舞・乱舞・自由・手を上に挙げるという特徴はつながり、黒潮の道を通って伝播したことを明らかにできた。 4,「阿波踊り」はさらに高知の「よさこい祭り」に影響を与えた。その「よさこい祭り」は伝統的な伝播の方法を一挙にかえて空路札幌に「YOSAKOIソ-ラン祭り」を誕生させた。また「阿波踊り」は日本全国に伝播し、東京都高円寺では「東京阿波踊り」を根付かせ、新たな発信基地となっている。 5,宮城県の「鹿踊」は、伊達藩の移封で四国宇和島に伝わった。その両者は形こそ似ているものの、テンポ・表現は大きく変容している。伝播と変容は、新しい芸能を誕生させるが、その地域の影響を大きく受けることが明らかとなった。 6,高知県四万十川流域では、過疎化状況のもとで民俗芸能の伝承を行なっている。それは共通した「花取踊り」を表出し、さらに狭い地域間で独自色を持つ。民俗芸能と地域の生活との結びつきの事例である。 これらは日本音楽教育学会や徳島県文化財指導者講習会で成果を発表した。論文は1998年3月と10月に掲載される。また視聴覚ソフトは現場での需要が届いており、現在作成中である。今後はさらに民俗芸能の伝播の欠落部分を埋めていくと同時に、黒潮の道をさらに南に延ばしていくことと、日本国内での伝播のルールを解明していく予定である。
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