研究概要 |
平成8年度は,多値論理・集合論理に基づく多重コンピューティングシステムの構成理論を体系化するとともに,、それぞれの実現方式ごとに特有の応用システムを取り上げ,その基本設計を行った. 1.(i)多値集積回路,(ii)周波数多重化/符号多重化集積回路,(iii)多波長光電子回路,(iv)酵素トランジスタによる分子回路のそれぞれについて,物理的に実現可能な多値論理ゲートおよび集合論理ゲートをモデル化し,その分類を行った.この結果,これらの論理ゲートの実現のためには,(i),(ii)においてはCMOS電流モード素子が,(iii)については誘電体多層膜を用いた光電子素子が,(iv)については酵素活性の電気的制御を実現する電気化学素子が,重要な鍵となることが判明した. 2.仕様として回路機能と実現手段が与えられたとき,最適な論理ゲートの組を選択し,配線数が最少となる多値論理回路・集合論理回路を合成するための系統的設計法について検討を行った. 3.上記の設計手法に基づいて,多値論理に基づく算術演算回路(高基数除算回路,高基数CORDIC演算回路,再構成型冗長複素数演算回路),符号多重化方式によるウェーブパラレル・イメージプロセッサおよび多波長光電子回路による並列インタコネクションネットワークの基本設計を行った.一方,(iv)の分子システムについては,酵素トランジスタの動作シミュレーションを通して,濃度信号に対する増幅回路,基本論理演算回路,フリップフロップ回路などの動作を確認し,配線をまったく用いない新しい原理の集積システムの可能性を示した.
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